ファスト読書 - 生成AI時代の新しい読書のカタチ
元ネタ: ファスト映画
Section titled “元ネタ: ファスト映画”- 映画の本編を短時間(通常は5〜10分程度)に編集し、ナレーションや字幕付きでストーリーを要約・紹介する動画のこと
- 日本では2020年前後からYouTube等で急速に広まった
- 著作権法違反の疑いで逮捕者も出ている等社会的に問題にもなったが、これはファスト映画という構造自体の問題ではない
- 作品の文脈や芸術性を損なうという批判や、制作者へのリスペクトを欠いているという批判もある
- 以下のような書籍も出版されており、インスタントにメディアを消費することに対する関心が高いといえる
ファスト読書とは
Section titled “ファスト読書とは”- 生成AI時代の新しい読書のカタチとして掲げたい
- 生成AIに書籍の要約を作成してもらい、それを元に人間がインプットを行う
- 書籍だけでなく、インターネット上にあるブログや技術記事等も対象
- 要は情報を圧縮し、自分のニーズにより合致した純度の高い情報をインプットする、という考え方
具体的な方法
Section titled “具体的な方法”- ChatGPTやGeminiに実装されている、インターネットの様々な情報を繋ぎ合わせ、高品質なレポートを生成する機能である「Deep Research」を使用する
- 単純な質問・回答よりもより深い情報が手軽に得られ、書籍の要約や複数の書籍間における関係性や立場、どこでも論じられていないような複数の概念間の結びつき等の情報が得られる
- 「パラシュート勉強法」と呼ばれる方法にも近い
- また、読んでみて思っていたのと違ったら積ん読、という従来型の読書に対し、読んでみて思っていたのと違ったと思ったら「本を再生成できる」というのも強みで、様々なプロンプトを試しながらアジャイル的に本を生成できる
- 個人的にはChatGPT PlusのDeep ResearchよりもGemini AdvancedのDeep Researchのほうが好み
- 理由としては
- Geminiに比べてChatGPTは利用回数の制限が厳しめ(Plusプランでも月10回が上限)
- Geminiのほうがより多くの文献を調査してくれる(経験的にChatGPTは数十リンク、Geminiは百数十リンク)
- Geminiのほうがレポートが比較的長い(ChatGPTは10数ページ、Geminiは25ページ前後)
- GeminiのほうがPDF形式での出力が容易
- ちなみにGeminiでは無料プランと有料プランでDeep Researchに使用されるモデルが違う等に注意する必要がある
- また、Geminiでは基本的に画像は埋め込まれないため(ChatGPTでは稀に埋め込まれる)、視覚的には単調な仕上がりになってしまうことや、極稀に一部の文章が翻訳されないままレポートとして出力されることがある等、従来の出版物との品質的な観点で劣る面もあるが、これに関しては今後の進化を期待する
- 情報源の信頼性が低いケースやハルシネーションの可能性は依然として存在するため、必要に応じて他の情報をあたったり、参考文献に目を通すことは重要である
発展的な方法
Section titled “発展的な方法”- 筆者はまだ試したことがないが、NotebookLMに関連分野のPDFや動画を読み込み、質問を繰り返すというスタイルによって、よりインタラクティブな読書体験が実現できる可能性がある
- 「問い駆動(Question-Driven)」と呼ばれる方法にも近い
- NotebookLMに関しては 生成AI関連ツールを使い倒す > NotebookLM でも触れた
- 筆者は検証できていないが、GeminiやChatGPT以外にも、ClaudeやFelo、Perplexity、Grok、Genspark、DeepSeek等でも同様の機能が提供されているため、ユースケースに応じて使い分けるという手もあるかもしれない
- ClaudeのResearch機能はインターネットに公開されていない情報にも参照させることができ、Deep ResearchとNotebookLMのようなRAGを組み合わせたような構成となっている
- しかし、高価な上位プランが必要となるため、ClaudeのWeb検索機能と「じっくり考える」機能を併用して擬似的に再現したほうがコスパは良い
- Feloのディープモードはスライドの自動生成が統合されている点でユニーク
- Perplexityのリサーチモードは高速だが長文の出力はまだ苦手な模様
- GrokにはDeepSearchとその高機能版であるDeeperSearchが提供されており、いずれもX(旧Twitter)上のリアルタイムな投稿の情報を盛り込める点が強み
- GensparkのSparkpageやDeepSeekのDeepThinkは無料で利用できる点が強み
- ClaudeのResearch機能はインターネットに公開されていない情報にも参照させることができ、Deep ResearchとNotebookLMのようなRAGを組み合わせたような構成となっている
- ChatGPTやGeminiに代表されるDeep Research関連の機能は今後どのような進化を辿るか
- 画像、音声、動画といったマルチモーダルへの対応や特定の分野に特化した専門性の高いDeep Researchの登場等が期待できるかもしれない
従来の読書の必要性
Section titled “従来の読書の必要性”- 上述した「ファスト読書」というメソッドは一見すると従来型の読書を置き換えてしまうように見えるがそうではない
- 効率的、すなわち自分が追い求める情報をインプットするという観点では有効
- 読書には著者や物語に登場するキャラクターを通しての批判的な対話という役割があり、それは著者の表現方法に大きく依存している
- また、著者の思考プロセスをトレースし、時空を超えて体験を共にするという役割(一種の旅)や、自分が意図していない情報について仕入れる(セレンディピティ)という役割も持っている
- 他にも、圧縮されていない情報だからこそ、より多くの時間をそのことについて考え、解釈を張り巡らせられる、ということでもある
- 「あえて偏見を得る」「過去の考え方を得る」「洗練された名著を知る」といった側面もありそう
- 最後に、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』第1期第15話「硫黄降る街」にて、槙島聖護が共犯者のチェ・グソンに対して語った印象的なセリフを引用して終わりとする
本はね、ただ文字を読むんじゃない。
自分の感覚を調整するためのツールでもある。
調子の悪い時に本の内容が頭に入ってこないことがある。
そういう時は、何が読書の邪魔をしているか考える。
調子が悪い時でもスラスラと内容が入ってくる本もある。
何故そうなのか考える。
精神的な調律、チューニングみたいなものかな。
調律する際大事なのは、紙に指で触れている感覚や、本をペラペラめくった時、瞬間的に脳の神経を刺激するものだ。
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